IE 7 だって一生懸命なんだ

マイクロソフトでインターネット・エクスプローラ・プラットフォームのグループ・プログラム・マネージャーをしている Chris Wilson が自分の blog の中で次のように書いている。以下、私による要約。

IE 7 の CSS 適応度合いの低さがスラッシュドット採り上げられたりしているようだが、その話題は今更だしデータも偏っている。そもそも、あらゆる統計というものは偏っているものだが、あちこちで見かける Web browser standards support summary は特に IE に対して悪意を抱いていて公平ではない。更にそのうちの CSS 2.1 の対応度を、IE 6: 52%、IE 7: 54% としているのは全くもって公平ではない。

我々はそれなりに一生懸命やっているのに、こういう悪意を抱いた評価が出てくるのには我慢がならない。あれもこれも、細かい点までは対応出来ていないかも知れないが、何と言っても W3CCSS 1 テストにはパスしているじゃないか。Acid 2 テストには通っていないけど、background-position: fixed に body 以外でも対応したし、float だって頑張ったじゃないか。
IE 7 は以下の 3 点に取り分け重点を置いている。セキュリティ、ユーザーの体験、プラットフォーム上での標準規格への適合だ。我々の最終目標は、ウェブ・デベロッパーの日常業務を、標準規格へ IE をより対応させて、より良くする事にあるのだ。」

IE 6 を長い間放置してきたツケを、今になって払わされているマイクロソフト。担当者としては、それなりに一生懸命やっているのだろう。マイクロソフトを毛嫌いする人が、彼らが何をやっても必ずや何らかの陰謀を隠し持った行為にしか見ないのと同様に、内部の人は、世間はマイクロソフトに悪意を抱いてバッシングしようと、あら探しばかりしていると思っているようだ。自分たちはこんなに一生懸命頑張っているのに、なんで世間は認めてくれないんだと、不満すら感じているというのが本音らしい。
中学に入って以来、高校になっても遊んでばかりいた生徒が、大学受験を前にしてこの 1 年間、少しばかり人並みに努力を始めただけなのに、それを誰も誉めてくれないとすねているようなものだ。頑張っているのは君だけではない。回りのみんなは、何年も前から今の君以上に努力し続けていたのだ。受験前になって他人並の努力をようやく始めた君には、誉めてもらえない理由が未だ全く分かっていないようだ。回りのみんなは言っているよ。とにかく結果を出してくれと。

  • コメントを幾つか頂いたので、補足をしておきます。
  • 「頑張っている」という表現ですが、直接それに当たるそれを「私による要約」の中でははっきり書きませんでしたが、以下の箇所を私は要約してそう取ったものです。
    • we’ve been working hard to improve our standards support in IE7, and I believe it is simply wrong to think that we’ve only moved the needle 2%.
    • 「我々は IE 7 の規格への準拠向上に必死になって取り組んでいるのに、我々が針をたったの 2% しか進めていないというのは、明らかな誤りである」
  • 更に、マルチ・カラム(CSS による段組)に float のバグで IE 7 が十分対応していないという点も、彼の理解を超えているとはっきり書いています。彼曰く、I don’t understand the problem - much of the web uses columnar layouts that work in IE. すなわち実際のウェブは IE で動く段組レイアウトを多用しているではないか。何が問題なのだ。(威張ってますね。しかし本人はそんな風には思ってはいないのでしょう。その分、更に深刻です。)
  • 先に言及した CSS 1 には通っているのにという他に、この補足で追加したような事を言う開発責任者のもとで作られるブラウザが、マトモになるはずがありません。そんな事は最初から分かっていたのです。しかし一部には、はかない期待をいだいていたナイーブな人たちがいたという事ですね。

IE 7 Beta 3 Review 記事が幾つか出てきているようです。Bad Buggy Beta 3 of Internet Explorer 7 などは、はっきりモノを言っているように思えます。以下にその要約。(主要部分はそのまま訳しています。)

Beta 3 というからには、Beta 2 までで新機能の追加はやめ、残ったバグを修正しもう一歩で製品版になる、そのような Beta 3 を期待していた。確かに RSS サポート、タブまわり、印刷機能の向上、画像のズーム等の点で IE 7 は、今や誰も使うべきではない IE 6 よりはるかに優れている。
製品版の IE 7 は Windows Update により間もなく多くのユーザの元へ届くだろう。安全性という点で IE 6 よりはマシなのだから、このアップデートは行うべきだ。しかし「良いブラウザ体験」を Windows の上で求めるなら、FirefoxOpera を手に入れるべきである。
マイクロソフトの標準への準拠というのは、単なるリップサービスだ。XHTML1.0/1.1 への対応はないに等しい。CSS 2.1 への対応も大した事がない。

その他、多くのブラウザ・ウィンドーを開けておくと、開始や終了に致命的問題が生じる点などが上がっている。終了出来ないとかネットにつながらないとかいった致命的問題は、公開版までには直してくるだろう。