発想の違い

Firefox のブックマークツールバーが便利すぎるについて何か書かなければならない気がした。公平な比較を試みようとして、level さんは FirefoxOpera でそれぞれに似た機能を有するツールバーを取り上げて、そこでの bookmark の扱いを比較している。
しかし明らかにされるべき問題は、ブラウザの機能側からの視点による比較ではなく、実際に使うユーザの視点からの比較でなければならないと思う。FirefoxOpera は単に描画エンジンが異なるだけではなく、あらゆる点で全く別の源から生まれたアプリケーションでありながら、似たようなブラウジング体験をユーザに提供出来る域に達した道具である。生まれや育ちが異なるものの、表面上の大方において両者は直接の比較を受け入れるかのような印象を与える程に似て来ている。
比較すべきは、それぞれのブラウザが、互いに相当するツールバー上でどの機能を有しているかという点にあるのではない。もし上記リンク先の比較にうなずける Opera ユーザがいるなら、その人は Firefox を使った方がより豊かに日々のブラウジングが行えるであろう。
FirefoxOpera は bookmark の操作を、共にツールバーとパネル/サイドバーから行える。Bookmark の操作を Opera では、主としてパネルから行うと考えられているようだ。パネルからなら Opera は、タブにせよウィンドーにせよ「バックグラウンドで開く」を始めとする、標準の Firefox では「出来ない」多彩な操作が可能である。ツールバーとパネル/サイドバーの両方に、同じ操作を与えている Firefox の方を好むか、パネルにだけそうした選択肢を与えている Opera で十分と感じるか、これは好みと言うしかない。
恐らく多くの人にとって、bookmark は「ツールバー」から開くのが習慣になっているのだろう。その習慣を保持したいのなら*1、上に書いた通り、現状では Firefox を使った方が良いだろう。ただしその場合は、画面上に一行分の空間が常にそのバーによって占められる。この表示/非表示を切り替えるには、クリック・フォーカス・クリックという三操作を Firefox では要する。Opera でパーソナルバーなり他のバーの表示/非表示を切り替えるには、更に多くの手数を要する。これはどう考えてもバーの表示/非表示を頻繁に切り替えない前提で UI が作られているあかしだろう。
この表示/非表示切り替えに要する手数という点から Opera の UI を見ると、パネル(旧呼称 Hotlist)こそが Opera の主たる操作拠点である事が分かる。その表示切り替えは多くの人がそうしているだろう設定の場合にはワンクリック、浮動表示というより Opera らしい使い方をしている人の場合には、フォーカスをパネルに移す、あるいは場合によってはそれすら要しない、敢えて言えば視線を移すだけという、最速 UI が既に実現しているとも言える。

  • Operaの良いところ を見て よりOperaOperaらしく使ってみるのも参考になるかも知れない。
    • 手厚く博学なコミュニティを抱えているのはFirefoxというのは全く同意で、コミュニティから距離を置いて Firefox を使うのは Firefox のためにも使用者自身のためにも損だ。
  • kuruma さんにコメントされたので、LinuxOpera でのパーソナルバー上のコンテキストメニュのスクリーンショットを貼って置きます。

context menu on Linux Opera

  • 私も普段はバーの類を一切出していないので、気にしていなかった。
  • T さんのコメントにあるように、Windows でも Ctrl+Shift を押せばバグをカバー出来るようです。

このエントリは level さんとこと kuruma さんとこへの反応らしいから、そっち関連で大事な点を付け加えておこう。
したい事が現状で既に出来ているから乗り換えは不要、という意見はもっともらしいが一面で真実ではない。以前てらじが書いていたように思うが、Ctrl+B が Paste and Go なのを教わっても、それを便利とも思わずペーストして Go ボタンを押すのに何の迷いもない人に Opera を勧めても無駄だと彼は書いていた。スピードダイヤルは便利だよと言っても、私は使わないからという人には同じく無駄だ。MDI は便利だよと何度言っても、タブを切り替えれば済むとしか思えない人には意味がない。
ここのタイトルに掲げた発想が云々というのは、そういう事だ。こうしたら便利だよという提案に、どれだけ柔軟に対応出来るかは、人によって違うだろう。

メモり消費量

数値化可能な比較はちゃんとテストして欲しいと思う。50個ものタブを開いた時の話なんて私にはただのストレステストにしか思えないのだが、主張する以上はその条件も明記して欲しい。

細かい条件を示した上での数値は、Opera に勤めている人からあるだろうから、より実践的な参考値とコメントを書いておく。手許の環境は Windows 2000 SP4/RAM 512MB/Celeron 1.4GHz、タブなしで起動させた直後の Windows タスクマネージャの示した数値は 64MB。そこから自分でよく開くサイトが登録されている二つの bookmark フォルダをフォルダごと開いてみた。その数、あわせて 75 ページ/タブ。私の所は MDI で使っているので各タブは全画面の 3/4 程度の大きさで開いている。それだけでは単なる「ストレステスト」にしか思えないだろうから、各ページを順に最前面に表示させ、念のために各ページを下までスクロールさせて実際の使用状況を再現させてみた。その時の使用メモリが 250MB。はてなの動画サービス Rimo も入っていたので、フラッシュ・プラグインも動いているだろう。
その上で上記リンク先とここはてなを別タブで追加して開いたから、総タブ数は 77 になっている。スクロールの速度低下など、直ぐに分かるようなパフォーマンス低下は今のところない。かような環境で、今も現にこれを書いています。

  • この状態では、ページタブで全てのページを見渡すのは不可能だから、いっそ非表示にして右クリック+マウスホイール、もしくは Ctrl+Tab で各画面の縮小表示を頼りに切り替えるしかない。
  • タブバーを非表示にするのは、こういう環境でこそ意味が出てくる。
  • 一旦エントリを書き終えたので、ここを除く全てのタブを閉じてタスクマネージャを確認。159MB を使っているようだ。
  • しばらく何もしないでおくとメモリ使用量が 145MB に下がった。その状態から trash を開いて先ほどまで開いていたページから適当に 20 ばかりを再度開いてみた。145MB は変わらず。
  • 最初に書いた通り、これは特殊なストレステストではなく、Opera を少し使っている人なら日常的に行っている使い方です。とりあえず読みそうなページは全部開いておいて、読んだら閉じる。閉じてから再度必要だと気付けば trash から復活。
  • Linux Opera on Fedora Core 6 で、上記とほぼ同じ bookmark を 77 個開いてみた。KDE のシステムガードが示すタブ・ゼロ起動時の VmRss(実メモリ使用量) は 46MB、77 開き切った後が 236MB。ここを除いて全て閉じた現在は 79MB。

*1:本当は「IE 由来の非効率的操作 UI に固執したいのなら」と言いたい。