論法がズルイ

IE shell もしくは日本の呼び方で IE コンポーネント・ブラウザや Netscape には興味がないので、どれだったか覚えていないが、描画エンジンを切り替えられるとして次のような主張をしているものがあるようだ。いわく IE の Trident と MozillaGecko を自在に切り替えられるので、相互運用性と安全性の両立が可能である。
IE 向けに書かれた腐ったページは Trident で表示させる。しかし Internet Explorer だからセキュリティに不安が伴う。しかし Gecko に切り替えられるから安心だ。こんな論じ方に説得されるような人は、他のもっと巧妙に仕掛けられたトリックに簡単に引っかかってしまうだろう。Trident を動かしている時には Gecko の安全性は得られない。Gecko を動かしている時には Trident の底なしの互換性は得られない。二者択一のジレンマは、依然として我々の下にある。こういう論法を、詭弁という。
さてここからが本題だ。Firefox の一大広報主任がこんなエントリを書いていた。- firefox performance problems?
何もエイサだけがおかしいのではない。むしろ彼は素直な人だ。彼自身の Firefox が、常時入れていた Firebug のお陰で、ひどいパフォーマンスの低下を被ったと正直に公表しているからだ。

  • 彼が目にした苦情の中には、Firefox 2 の起動に 30 秒もかかるといったものもあったという。
  • 彼自身の Firefox 2 や 3 も、タブを 6 つ以上開こうとすると固まるという。

彼ほど正直ではない多くの人々の場合には、こんな言い方をする。Firefox拡張機能(アドオン)を追加することによって無限のカスタムが可能である。数多い拡張の中でも Firebug は最も素晴らしいものの一つであると。一方でその同じ人が、Firefox はメモリを多く消費する、重い、あるいは良く固まると苦情を申し立てる人を良く目にするが、それらの原因の多くは不出来な拡張のせいである。Firefox 自体は無実で素晴らしいブラウザなのだ。拡張が不出来なのと Firefox 本体が不出来なのを混同するな、と言う。
不出来かどうかはともかく、拡張を入れていない Firefox は簡素なブラウザに過ぎない。その魅力は極言すれば、Gecko の優れた描画と最小限の簡素で分かりやすいインターフェースの組み合わせ、それに尽きるのではないかと私は思っている。
ところがもう一つの魅力である拡張について、Firefox を作っている人たちは Firefox を作るという立場からは関与しない。数少ない例外の一つがエイサが被った性能低下の元凶、Firebug であるというのも皮肉な話だ。

Firebugに対する称賛の声は枚挙にいとまがない。「Firebugなしには生きていけない」「FirebugがあるからFirefoxを使っている」などという声も聞く。

しかし一方で、こんなリストもある。

This article lists some of the extensions that are known to cause unwanted side effects in Firefox or in other extensions and plugins, along with recommended workarounds.

つまり素の Firefox は簡素をむねとするが、その素の Firefox に対する評価と、問題を抱えた拡張を込みにしたプラス・マイナスの評価を、ゴチャ混ぜにしてくれるなと言いたいのだ。同時に実現出来はしないのに、ある場面では簡素さを全面に押し出し、別の場面では無限の拡張性を口にする。これも一つの詭弁である。
先ずはそのあたりをはっきりさせてからでないと、「お話し」は成立しない。