Opera - 従業員が 10 人だった頃

Google アーカイブ検索を知り、Opera browser に関する昔の記事を読んでみた。いくつか読んだうち、最も興味を引く内容を含んだ以下の記事を紹介しておく。
1998 年 2 月の Opera 3.0 - Browser to Beat the Band には、従業員が 10 人で広報予算はゼロ、口コミで数十万ダウンロードを成し遂げたとある。当時の Opera 3.0 は 1.2MB しかなくフロッピー 1 枚に収まる。当時の比較対象は Netscape が 4.04、IE が 4.01 であり、さっそく速度比較表が掲載されている。比較相手がメモリ食いでスワップして速度低下を起こすのに*1Opera ではそうした速度低下はない。その理由についてテッチナー氏は、Microsoft Foundation Class (MFC) C++ libraries を利用していないからだとしている。
Opera 3.0 には今に続く zoom 機能を既に備えている。また HTML 2.0 に完全準拠し、HTML 3.2 についてもほとんど対応しているとある。W3C の標準規格に出来るだけ準拠しようというのが、当時からの社是であった。
しかし Opera 3.0 は Windows 版だけしかなく、JavaCSS に非対応であった。ホーコンさんが Opera に加わるのはこの後である。テッチナー氏とホーコンさんは Telenor での知合いで、その協力もありこの年の夏に公開予定の Opera 4.0 では CSS に対応するとされている。その他にも Opera 3.0 は redirect に対応していないなど、完成度はまだまだだったようだ。
Windows の他のアプリがみな MDI なのに、ブラウザがそうではないのはメモリ消費に不利であるとしている。現名称 Panel、当時は Hotlist を格納することによって、画面を広く使えるのも利点である。
更に面白いのは、ネットスケープエクスプローラ陣営に、Opera についてインタビューしているくだりであろう。
ネットスケープのプロダクトマネージャ Edith Gong は、面白いことに最近のエイサと同じようなことを言っている。概して素晴らしいが、インターフェースがゴチャゴチャしていると。また MS のプログラムマネージャ Dave Fester は、製作者側の意図通りに Opera は描画出来ないと疑問を投げかけている。この点に関してテッチナー氏は、1998 年の時点で次のように答えている。

"No one can really tell how the author wants the page to be viewed," he countered. "I've been following the Web from the beginning. The point of the Web was that it created a format that would suit any user or platform, not that it would let the author control the appearance of the page exactly."
(拙訳)
製作者がページをどのように見られたがっているかなんて、誰にも答えられやしない。私は当初から Web に従っているのだ。Web の優れている点とは、さまざまな利用者やプラットフォームに合致する様式に描画されるところであり、製作者側がページの見栄えを正確にコントロールしようとはさせないところなのだ。

最後に訳を付けたこの考え方は、後の SSR や携帯端末などへの転用につながる道を Opera 社にもたらすと共に、World Wide Web とは何かという基本的認識を、この会社が一貫して正しく持っていることをあかしていると思う。

  • Opera に関する昔の記事は、以前にも言及したが Opera in the News から探した方が速い。

*1:自らスワップさせて、メモリ消費が減った喜ぶ戯画人信者は救いようがない程おめでたい